等心大〜tou・sin・dai〜
秘密
友貴との時間は、すごく楽しい。

そしてラクだ。

ラク、というのは
ケッコー重要なことかもしれない



「ただいま」

家に帰ると
母はもう寝ていた。
父はまだ帰ってないみたいだ。


起こさないように
ソロソロと自分の部屋に行く。


部屋に入るとすぐに
スエットに着替えた。


バッグからケータイを出す。

朝チェックしなかった
大川さんからのメールを読む。



『嫌な気分にさせてごめん。
 彩との結婚を
 考えてないわけじゃないんだ。
 それは一緒に暮らしてみて
 じっくり相談したいと思う。
 考えてみてくれないか』



“考えてみてくれないか”

本気なのだろうか。

前に
悪いようにはしない、って
言ってた。

どういう意味なんだろう。
大川さんの真意がわからない。



あのマンションに
大川さんと暮らす。
悪くない。

けど、先があるの―?




子供は苦手だけど
いつかは欲しいと思ってる。

結婚して、
そういう人生を歩みたいと
思ってる。



大川さんと
叶えられるのだろうか。

私の気持ちに
大川さんは
応えてくれるのだろうか。




どう返信するか
考えあぐねていると
ケータイが鳴った。



画面には春奈の名前。



「もしもし?」

『あ、もしもし彩?
 いま大丈夫?ひとり?』

「うん、そーだけど…」


春奈の声は
少しアセッている。



『落ち着いて聞いてね。
 彩の言ってた大川さんだけど
 うちの父親と大川さんの父親、
 知り合いだった!』



―なんだ、そんなこと。

同業者だから
別に驚きはしない。
それなのに春奈の声は
早口でアセッている。



『本題はここからなんだけど…』



このあと、
春奈は信じられない言葉を
口にした。
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