等心大〜tou・sin・dai〜
翌朝。

私はいつもより早起きをして
身支度をすませた。




いつも
唇にはグロスしか塗らないけど
今日は口紅をきちんと塗って
その上にグロスを重ねた。



髪も丁寧に巻いた。
ネイルも自分でキレイにした。



気合いを入れてオシャレすると
背筋がしゃんと伸びる気がする。




9時になるのを待って
私は職場に電話した。



「今日、熱が出たので
 休みます」





仕事をしてる場合じゃないのだ。
私はなぜか
少しワクワクしてる。



下に降りると母が

「今日はなんだか
 いつもと違うメイクねぇ」

と首を傾げた。


「早く起きたから」

私はそう言って
コーヒーを飲んだ。


「お母さん、
 私がんばってくる」

母に背中を押してもらいたくて
そう言ってみた。


小さい頃、
学校で何かあるたび
私は朝こう言って
母に背を押してもらったのだ。



「なんだかわかんないけど
 がんばってらっしゃい」

母は私の背中を
ポンとかるく叩いた。





――よし。



家を出て
タクシーを拾うと
私は
大川さんの会社の住所を告げた。
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