等心大〜tou・sin・dai〜
「結構です。
 では、西村彩が来たとだけ
 お伝え下さい」

「西村 彩様ですね。
 承知いたしました」




――女は多分わかっている。

私が大川さんと
どういう関係なのか
わかっている。





私は足早にビルを出た。



出てから
胸がドキドキしてきた。




女の顔を
思い返してみる。


キレイな人だった。
顔立ちは美人ではないが
スタイルやセンスや、
立ち振る舞いが
キレイな人だった。






私はなぜか
ちっとも悲しくない。

ただ少しだけ
ガッカリしてはいる。




泥沼にハマる前にすべてわかって
よかったな、って思った。



私はケータイをバッグから出すと
電話帳から
大川さんの名前を消去した。
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