等心大〜tou・sin・dai〜
『妻には子供ができないんだ。
 彩が僕の子を産んでくれたら
 彩と正式に結婚できる』


あまりのくだらなさに
私は笑ってしまった。



そして
今日見た奥さんの顔を
思い出していた。



あの人は
夫が自分以外の女に
こんなことを言ってるのを
知ってるんだろうか。



あの自信たっぷりな微笑みが
不憫に思えた。





『彩?聞いてる?』

「冗談じゃないわ。
 後妻なんてまっぴらよ」



そう言いすてると
私は一方的に電話を切った。






――くだらない男。


時間を無駄にした。
大川さんのために
友貴と会うのもセーブしたのに。




やっぱり浮気はダメって
神様からのお告げかしら。


ポジティブにいこう。
ポジティブに。



私はまた
鼻歌をうたいながら
掃除機をかけた。
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