等心大〜tou・sin・dai〜
あれ?

真希って
こんな優しい顔だったっけ。


やっぱり
母になると変わるのかな。



「もうすっかり太っちゃってさ」

「そんなことないじゃん。
 お腹以外はフツーだよ」

「そうかなぁ」



真希が大切そうに
お腹をさする。

なんだか私には
それがまぶしく見えた。



「お腹、さわってもいい?」

「うん、いいよ〜」



そぅっと手を
真希のお腹にあてる。
思っていたより
かたかった。



――ここにいるんだ。

なんか不思議。
真希がお母さんなんて。
私と同い年なのに。




「いつ産まれるんだっけ」

「もう来月予定日だよ」

「へぇ〜すごいなぁ」


友達の妊婦姿って
ヘンな感じ。



真希は
私の知ってる真希じゃ
ないみたいだ。




「真希んち、この近くなの?」

「うん、寄ってく?」

「いいの?」

「いーよ。
 でもうちビンボーだから
 笑わないでね」

「あはは」





食べ終わると
私たちは喋りながら
真希の家に向かった。









「ここなの」


ホントに
カフェのすぐ近くだった。


築30年くらいたってるような
お世辞にもキレイとは言えない
古い木造アパートだった。



「汚いとこだけど、どうぞ」


建物は古いが
部屋はきちんと整頓されていた。



「テキトーに座って」

「おじゃましまーす」



小さな台所と
和室がふたつ。

昭和ムード漂うアパートだ。




「コーヒーと紅茶、
 どっちがいい?」

「あ、コーヒーがいい」

「砂糖とミルクは?」

「いらない」




部屋を見回すと
マタニティ雑誌や
赤ちゃんのオモチャがあった。


夫婦が
子供の誕生を待ち望んでるのが
伝わってくるようだ。
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