等心大〜tou・sin・dai〜
ふと棚に目をやると
安物の化粧品が並んでいた。




――つつましく生活してるんだ。




主婦は
使ってる化粧品で
生活レベルがわかると思う。

独身なら
化粧品に給料つぎこんで
カップラーメンすすってたり
なんてのもあるけど。




「汚いでしょう」

真希がコーヒーを
私の前に置いた。



「ううん。
 なんかあったかい感じする」

「いいわよ〜
 気なんか使わないで」

「旦那さん、どういう人?」

「フリーターなの」




一瞬、耳を疑った。



「フ、フリーター?」

「そう。バイトの身よ。
 それでも子供できてからは
 がんばってくれてるけどね」


そう言って
真希は笑った。




「お金とか…大丈夫なの?」


私は心底、心配になった。
来月には出産だというのに
旦那は何をやってるんだろう。




「なんとかなるわよ。
 これでも私、幸せなの」


幸せ?

これで?





真希が笑顔でそう言うので
私もそれ以上は
何も言えなかった。




私がいくら心配したって
結局のところ
どうしてあげることも
できないのだ。




「幸せならいいけどさ」


そのあと
なつかしい話や
近況を話して
私は帰った。



「また来てね」

「うん。
 産まれたら見にくるから」






真希の家からの帰り道
幸せって
いろんな形があるんだな、なんて
考えた。





私は自宅ではなく
友貴の部屋へ向かった。
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