等心大〜tou・sin・dai〜
「法事。
 ついでだから一泊するよ」

「めったに帰らないもんね」

「そうそう」

「親孝行してきなよ」

「どーかな」



よく考えると
友貴の親に
一度も会ったことない。

友貴は
親に私のことを
話したりするんだろうか。



「週末は私も仕事だし
 ちょうどよかったかも」

「そーだな」



私は土日も
仕事だったりするので
なかなか友貴と
休みが合わないのだ。







「今日泊まってく?」

少しの沈黙のあと、
友貴が聞く。



何度も聞いたこのセリフが
なんだか今は
心に引っ掛かった。






泊まっていって
ほしいんだろうか。

それとも
男女のエチケットとして
聞いてくれるだけ?






「泊まっていっていいの?」



友貴が
信じられない、という風に
目をまるくして

「なんだよ、それ。
 あたりまえだろ。」

と言った。




私は少しうれしくなって
友貴の後ろに回って
抱きしめた。

今日の私は
やっぱりおかしい。




そのまま
友貴が振り向いて
ギュッと
抱きしめてくれたので
私はなんだかホッとする。



キスをして
私も友貴の首に
手を回すと




「先にシャワー浴びてくる」



友貴がそう言って
体を離した。




――不満。

不満不満不満不満。



付き合いはじめた頃は
激情にまかせて
それこそシャワーなんて
浴びる前から
抱き合ったものなのに。
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