等心大〜tou・sin・dai〜
抑えきれない想い、は
もう友貴の中には
存在しないのだろうか。



こうして
馴れ親しんだ老夫婦のように
なっていくんだろうか。






そこまで考えて
“おたがいさま”
という言葉が
頭に浮かんだ。




私だってもう
出会った頃のような気持ちには
なれないのだ。



最近
ドキドキすることも
なくなった。


友貴といると
安心できるけど

“このまま一生
友貴だけでいいの?”

と思うと
ちょっと考えてしまう。




もう友貴に
ときめくことは
ないんだろうか。


友貴は私に
ときめくことが
あるだろうか。




人生に
スリルは必要ないと
思ってるけど
たまにはドキドキしたい。
恋がしたい。



会話もなく
共通の趣味もないような
自分の両親のようには
なりたくはない。


いつまでも
恋人のような夫婦でいるのは
ムリなんだろうか。







「サッパリした〜
 彩もシャワー浴びたら?」


友貴が
バスルームから出てきた。

「あ、うん」


そう答えて
シャワーの前に
食器を洗おうとしたら
友貴が私から
スポンジを奪いとって


「オレがやっとくから」

と言ってくれた。




あぁやっぱり
友貴はいいな。


私って単純。



「ありがとう
 じゃあ遠慮なく」

「あはは
 ちょっとは遠慮しろ〜」

「いじわる」

「ジョーダンだよ」
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