等心大〜tou・sin・dai〜
「おまえもなるべく早く
 高原さんのご実家へ行ってきなさい」


翌朝。
私の顔も見ずに
朝食を食べながら父が言った。

不機嫌なのかそうでないのか
よくわからない表情で。



「まぁ高原さんと相談して、ね」


小さく溜息をついた私を見て
母は不思議そうな顔をした。


「あらあら浮かない顔して。
 嬉しくないの?」




嬉しい。

結婚することは
嬉しいことだったはずなのに。
なんだか心の中が
ザワついている。



「また今度
 連れて来なさい」

父は友貴が気に入ったようだ。
それは
喜ばしいこと、なはず。
はずなのに。



「ごちそうさま」

「あら、もういいの?」


私は席を立つと
そそくさと家を出た。




吐き気がする。
イライラする。

歩きながら
ふと生理が遅れていることに気付いた。




――妊娠?



まさか。

不安な気持ちを払拭するように
早歩きで仕事に向かった。
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