等心大〜tou･sin･dai〜

「…大好き」

『…そんなのわかってるよっ
　変なやつだなー』

「ふ…へへっ…」

『好きだから結婚すんだろーが』





――好きだから。


そうだね。
結婚することって
きっとすごくシンプル。
そのことに
私気がつかなかった。

シンプルだけど
あたりまえのことだったのに。





「明日は早番だから
　何か作って待ってる」

『あー…
　明日は外で食おうぜ』

「なんで？」

『いいから！
　じゃあ明日なっ』


友貴が照れたような態度で
慌ただしく電話を切った。



「…変なの」


携帯を閉じると
私はまた
妊娠検査薬の箱を見た。





妊娠してないかもしれない。
でも
妊娠してるかもしれない。


調べれば
ハッキリすることなのに
知るのが、怖い。
ハッキリしたとき
私はどうしたらいいのか。




もともと
子供なんて好きじゃない。
欲しいと思ったこともない。


いつかは子供をもつだろう、と
思ってはいたけれど
それはまだまだ
何年も先のことだと思ってた。





――もし妊娠してたら？

産むの？
堕ろすの？



答えはまだ出ない。



でも
友貴の子なら
確信があったら
絶対に産むのに。




誰の子かなんて
きっとすぐにはわからない。


友貴も私もＯ型だから
友貴の子なら
産まれてくる子はＯ型なはず。



――大川さんはAB型。

Ｏ型の子は
産まれてこない。



隠して結婚して
もし友貴の子じゃなかったら？

そう考えると
隠したまま結婚して
出産することなんて
不可能なことだ。
もし友貴の子であれば
ハッピーエンドになるけれど。





――じゃあ堕ろすの？





一晩中
グルグルそんなことを考えて
私はよく眠れなかった。