初恋日記
ブタに噛まれた一ヶ月
それはひと月前…
「あぶないっ…!」
俺に、彼女ができた。
駅のホームでコケそうになった彼女を俺が助けたのがきっかけだった。
それからというもの、俺らは普通に初々しいカップルとして幸せだった。
ただ、彼女は気づいていなかった。
俺らの出会いは駅のホームなんかじゃない、もっと昔だった。
幸せな夜空の下、俺は彼女にそのことを教えた。
「え…えー!?吉澤って…あの吉澤寛太!?」
彼女は、俺たちが小学校の同級生だったことに気づいていなかったのだ。
ったく、俺はすぐに気づいたのにさ。なんつったって…
「…別れましょう」
「え…!?な、なんでだよ!?」
「私、あんたのこと大っ嫌いだったのよ!」
「は!?」
それまで俺の胸でうっとりしていた彼女は一変、一瞬にして俺から離れていった。
「お、おい待てよ!」
「やっ近づかないでよっ!」
「おまえ、マジで気づいてなかったのかよ!?」
「だって、私あなたの名字知らなかったもん!」
「面影とかさぁ~、あるだろ?」
「知らない!あんたの顔なんか忘れてたんだからっ!」
グサッ…
「…だからってすぐさま別れましょうってなんだよ!?」
「だからあんたのこと大嫌いだったって言ってるでしょ!」
「昔のことだろ!この一ヶ月普通に幸せだっただろ!?」
彼女は立ち止まった。
「な?考え直そ…」
「この一ヶ月は、ブタに噛まれたと思って忘れましょう」
彼女はわけのわからんことを言い、一切振り向かないまま立ち去った。
なんだよ…
俺が何したってんだよーーー!?