晴れた空が見えるまで
「あの、本当に何でも引き受けてくれるのでしょうか?」
「基本的にはな。」
黒部さんが肩を竦め、透かさず答える。
「私を、ストーカーから守っていただきたいんです。」
「ストーカー?そりゃあ大変だ。」
身を乗り出してきたのは赤石さんだった。
「楓は少し下がっててください。よろしければ詳しく聞かせてもらえますか、えーっと……」
「あ、失礼しました。私、西城 実里(サイジョウ ミノリ)と申します。」
「西城さん、どういったストーカー行為を受けているんです?」
私は一つ頷いて、一ヶ月前の記憶を遡った。
「あの日は雨が降り続いていました。」
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いつもの通りの日常。
朝起きて大学へ向かい、講義を終えれば、今度はバイト先へと向かう。
何の変哲もないコンビニのアルバイト。
帰りは少し遅めの23時になる。
とは言うものの慣れてしまえば何てことはなく、雨避けの傘を差しながら帰路についていた。
違和感を覚えたのは角を一つ曲がれば家に着くという距離に入った時。
ピチャッと後ろから足音が聞こえて、私は振り向いた。
けれどそこに人影はなく、私が足を止めると音も止んだ。
もしかして自分の足音を勘違いしたのかもしれないと、再び歩き出すとやっぱり後ろから音がする。
しかもそれは確実に早まり、徐々に近付いてくる。
怖くなった私は振り向かずに走って家に駆け込んだ。
後ろ手にドアを閉め、ズルズルとその場に座り込んだとき、ドンッとドアが叩かれた。
私は身体を強張らせて、ドアを見つめたけれど、それ以降音はならなかった。
ドアに設置されている覗き穴から外の様子を見たけれど、人影は確認できなかった。