【完】溺愛プリンセス~最強Boysに愛されて~
それは、唐突にやって来た。
「類……千咲……」
ある休日の午後、リビングで千咲と二人
、絵を描きながら遊んでいたら、不意に
後ろから声をかけられて。
「なあに、お母さ……」
お母さん、というセリフは、途中までで
形を無くした。
そこに立っていたのは、確かに母親だっ
た。──だけど、母親じゃなかった。
母親の形をした、別の"何か"だった。
「おかーさん、なんでトントン持ってる
の?」
横で千咲が、母親に向かってそう問いか
ける。
トントン、というのは、包丁の事。
そう。──母親の手には、鋭く光る、包
丁が握られていた。