【完】溺愛プリンセス~最強Boysに愛されて~
本能的に、ヤバい、と思った。
母親の目は虚ろで、色を無くしていて、
どこを見ているのかもわからない状態だ
った。
「な、なにしてるのお母さん……」
「類……類は、お母さんの事、好き?」
包丁を俺ら二人に突きつけたままで、そ
う訊いてきた母親。
こんな状況で、好きだとか、そんなの考
えられなかった。
冷や汗が、身体中から噴き出す。
恐怖で、瞬きをすることすら忘れた眼か
ら、涙が出てきた。
「類、どうして泣くの?怖いの?大丈夫
。すぐに楽にしてあげる……」
そんな母親に、イヤだ、と必死で首を横
に振った。
逃げたかったけど、足が動かなかった。