すっぴん★

あくる日の夕方。


素は阪神梅田駅の改札口で俊介と待ち合わせると、居酒屋に俊介を誘
った。

その居酒屋は、ジンマシン騒動で大騒ぎした例の居酒屋。高橋とかお
るの度肝を抜く道行きで幕を閉じた、粋な居酒屋『はしご屋』であっ
た。

先日の合コンの余韻が残っていたのか、なぜか素の足が、その居酒屋
に向ってしまった。


「この居酒屋で先日、合コンをしたの」


席に着くなり、素が口を開いた。


「合コン?誰と」


俊介が驚いた顔で。


「女性陣は、前の・・・。ほら、鳥見君もいた例の合コンのメンバー。
ね。わかるでしょう。男性陣は・・・。それが・・・。まあ、一言で
言うならば、お通夜のおかま幽霊よ」


「お通夜のおかま幽霊。それって、どんな連中」


お通夜のおかま幽霊という言葉に、俊介が興味を持った。


「その合コンて、まるでお通夜みたい。誰も喋らないの。シーンと静
まりかえって、白け鳥が、西の席から東の席へ、北の席から南の席へ、
飛んでいるの」

先日の合コンを思い出しながら素が。


「そんな合コンあるの」

俊介が不思議そうな顔をした。


「それが、あるのよ」


素が自信たっぷりに言った。






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