すっぴん★
 
「そんなに謝らないで。まだ、それが犯人だと決まった訳ではないし。
そのブレスレット、鍍金なの」

素がオーバーに頭を下げる俊介を見て。

 
「うん。安物の金鍍金製。金が無くて本物は買えなかったんだ。ごめ
んね」
 
「下地には、ニッケルが使われていて、それによるアレルギーという
訳ね」

「一生の不覚だよ。ごめん。ごめん。この通りだよ」


俊介が両手を合わせて、手を擦るようにして素に謝った。


「本当にそのブレスレットが、犯人なのかな」

素は、そのブレスレットが犯人とは到底思えなかった。

「だから、君の腕で実際にテストしたくて・・・。それで、君に会お
うと思ったんだ。ね、テスト駄目かな」

「また、テスト。いいけど。でも、ここではね。もしもよ、そのブレ
スレットが犯人だったら私はどうなるの。・・・ねえ、分かるでしょ
う」


素は、自分のマンションでテストをするかどうか、迷っていた。


「そりゃ、分かるけど。じゃ、俺んちに来る?」
「あなたの家に。でも、そのブレスレットがもし犯人だったら、家に
帰れなくなるかも。それも困るしね。ちょっと、考えさせてくれない」


素は、生ビールの三分の一位をひと息で飲み干した。





 
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