すっぴん★

「狂気がいいのよ。ごみの山に囲まれるから、燃えるのよ。臭気も香
水の芳しき香りよ。だって、かおるは言っていたわ。彼は初めてこの
山と、私を征服したって」

素が真剣な顔をして言った。

「信じられない。絶対に信じられない」

俊介は目を丸くした。そして、あのゴミ屋敷で戯れる二人を想像した。

「ありえない。ありえない」

俊介が、妄想を消し去ろうとした。しかし、妄想はさらにエスカレー
トとして、信じられない映像を映し出す。


男と女は、ゴミの山の頂上で、激しく激しく抱き合う。
ゴミとガラクタの混沌とした山の上で。


時折、振動でゴミとガラクタが崩れて落ちてゆく。


一度、あのゴミ屋敷に足を入れた者なら、どれだけ狂っているかおわ
かりのはず。正常な人間なら絶対に無理。無理。無理。





< 115 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop