すっぴん★
「狂気がいいのよ。ごみの山に囲まれるから、燃えるのよ。臭気も香
水の芳しき香りよ。だって、かおるは言っていたわ。彼は初めてこの
山と、私を征服したって」
素が真剣な顔をして言った。
「信じられない。絶対に信じられない」
俊介は目を丸くした。そして、あのゴミ屋敷で戯れる二人を想像した。
「ありえない。ありえない」
俊介が、妄想を消し去ろうとした。しかし、妄想はさらにエスカレー
トとして、信じられない映像を映し出す。
男と女は、ゴミの山の頂上で、激しく激しく抱き合う。
ゴミとガラクタの混沌とした山の上で。
時折、振動でゴミとガラクタが崩れて落ちてゆく。
一度、あのゴミ屋敷に足を入れた者なら、どれだけ狂っているかおわ
かりのはず。正常な人間なら絶対に無理。無理。無理。