すっぴん★

「君のコップも磨く?」


俊介がもう一つのコップを持ち上げて、かおるの同意を求めた。


ぶるぶるぶる。


急いで首を振ると、かおるは俊介の手からコップをもぎ取った。


「こんなに綺麗やん」


かおるがコップを持ち上げ透かして見詰めながら、さらに言葉を続け
た。


「磨き倒したコップでビールを飲んでも、いっこもおいしい事あれへ
ん。私はこのままの方がええわ」


そう言うと、かおるは手酌でビールをぐいぐいと注ぎ出した。



「ヒェ~。うめえっ。ビールは少し位汚れたコップで飲むのがうめえ
んだ」


かおるがビールを一気に煽った。


自宅の台所の流し台。
その上に、散乱する汚い汚いコップたち。

かおるはビールを飲みながら、自宅の食卓を思い出していた。


(このコップの方がどれだけ綺麗。1万倍も綺麗わ)


かおるは、自分の世界に耽りながらビールを旨そうに飲み続けていた。


俊介は、目をぱちくりとさせるばかり。
直感で、かおると自分は人種が違うのだ、と俊介は思っていた。





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