DECIMATION~選別の贄~
東谷は深くソファに腰かけて、背当てに身体を預ける。
そしてゆっくりと深く息を吸った。
「何かが起こり始めている。
さぁこのことにいったいこの平和ボケした国の何人が気づいているのかな?」
東谷は笑った。
まるでずっと欲しかった玩具をようやく親に買い与えられた子供のように純粋な悪戯な笑顔で。
「……さぁ、回診の時間だ」
東谷は空になったコーヒーカップを持って部屋を出る。
途中ですれ違ったナースがそのコーヒーカップを受け取った。
東谷は笑顔で礼を言って歩いていく。
その歩調はどこか軽やかであった。