DECIMATION~選別の贄~

日が沈み街にはネオンが灯りだした。

その界隈では有名な会社のビルから二人の男が出てきた。

そのうちの一人の男が入り口の自動ドアが閉まる瞬間に大きなガッツポーズをした。

「……とった。とったぞ!

見たかオレの力を!どうだ!!」

柄にもない叫びで会議での手応えを表に出す櫛田。

同行していた二年目の新人社員の三浦はそんな櫛田を静かに見守っている。

「三浦、見たかよ。先方俺の企画をべた褒めだったぜ!あの気難しい社長さんがだよ」

「すごいっすね。僕もあの社長があんなにちゃんとプレゼン聞いてるとこ初めて見ましたよ」

「だろう?はははは」

上機嫌に歩く櫛田。

いつの間にかスキップでも踏んでいそうなほどに軽い歩調で歩いている。

「たまたま当たっただけなのに、まじうぜぇこのノリ」

三浦は櫛田に聞こえないようにぼそりと呟いた。

自分との温度差を感じ取ったのか櫛田が急に立ち止まり、三浦に振り返った。

「三浦どうした?なんだったら今から飲みいくか?」

「まじっすか?櫛田さんから誘われるとかどんな風の吹き回しすか?

でも残念なんですけど、僕今から課長に呼び出しくらってて、すんません」

三浦は人付き合いが上手い。

人の目をしっかりと意識しながら働くことができ、元々要領も良いので上司の評価はすぐに上がる。

櫛田とは真反対の評価を受ける人間性をもっていた。

「ん?なんだ、なんかやっちまったのか?大丈夫かよ、おい」

「ははは、そうなんすよ。また怒られるんすかねー?」

へらへらと会話を流す三浦。

普段ならそんな態度にブツブツと呟きが出ていたかもしれない。

しかし、今は精根つぎ込んだ企画のプレゼンに十分すぎる手応えを持った櫛田は気にもとめない。

「そっか、じゃあまた今度だな。

会社戻ったら今日は俺は直帰って伝えといてくれ」

「ういーっす。おつかれさんす」

小さく頭を下げて三浦は呼び止めたタクシーで走っていった。

一人のこされた櫛田はウキウキと家に帰っていく。

「今日買ったフイギュア達を早く外に出してあげなくちゃな。

待ってろよ」

小走りで家路を進む櫛田。

この後一時間もしないうちに、今回の企画のプレゼンが三浦の手柄にされてしまうことを櫛田はきづいてもいなかった。

精根つぎ込んだ企画が部下に横取りされ、その企画チームからも下ろされてしまったことを櫛田本人が知るのは翌週の会議でのことだった。




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