DECIMATION~選別の贄~
その二日後、櫛田の遺体が自宅の布団で見つかった。
かけられた布団の中では腹部を無惨に切り裂かれ、ズタズタに内臓を切り取られた哀れな櫛田の姿があった。
櫛田は独り暮らしで友人と言える存在も恋人もいなかった。
そのことが遺体発見を遥かに後回しにさせた。
櫛田が音信不通となり、不思議に思ったホビーショップの店員の通報で櫛田一政の行方が分からなくなっていることが判明した。
会社に連絡もなく、捜査に乗り出した警察が自宅を訪れ遺体を発見した。
「一政くん……どうして」
浩二は櫛田の死で唯一涙を流した。
疎遠の母は報道記者に向かって堂々と「清々した」と言ってのけた。
誰にも愛されることなく、人との関係を絶ったままで櫛田一政はその生涯を理不尽に閉ざされた。
「君はきっと後悔の中で逝ったのだろうね。
不満があるときにする爪を噛む癖を見るたびに僕は君を救ってあげられなかった自分を責めていた。
でもこの前君はいつかの背中を見せていたじゃないか。もう少しだったのに……なんで」
警察が慌ただしく動く横で浩二は静かに静かに泣いた。
そして警察は櫛田の努めていた会社に捜査に入った。
それを予見していたのだろう佐竹由奈は突然その姿を消していた。
櫛田との関係性からも佐竹に捜査の目が向き、重要参考人として家宅捜索が行われた。
佐竹の家からは櫛田の毛髪や、大量のホルマリン溶液や人間の臓器でも収容できるケースが多量に発見された。
しかし佐竹の姿はそこにはなく、暗幕で閉ざされた部屋の棚の中は空っぽだった。
警察はすぐに佐竹由奈の逮捕状を作成、捜査の手は着々と彼女に伸びていた。
国塚は一人の弁当を食べ終える。
同僚の佐竹が指名手配となり気持ちは落ち込んでいた。
メールや電話を試みたがすでに携帯を処分しているのか繋がらなかった。
そしてもう一人、佐竹と同じ時期に連絡が着かなくなった人が居たのだった。
「二葉、由奈と一緒にいるの?どうか無事で……」
中山も一昨日から急に連絡が途絶え、会社を無断欠勤していた。
国塚は無事を祈った。
手は震えていた。