DECIMATION~選別の贄~
クピードー
その夜、非番であった波田の携帯が鳴り響いた。
「……あ?
なんだそりゃあ」
それは安岡かの救難信号であり、これから続く連続強姦殺人の幕開けのベルとなった。
「分かった、オレもすぐに向かう」
波田は携帯にを切ってコートを羽織って飛び出した。
長年の刑事の勘か、それとも被害者の無惨な状況を伝え聞いたことで、この事件がこれだけでは済まないことを悟ったのか定かではない。
しかし一刻も早く現場に向かうことへの疑問は欠片ほどもなかったのは確かであった。
被害者は近隣のスーパーでパートとして働いていた28歳の女性。
犬の散歩をしていた主婦が路地裏を通りかかると無惨な姿になった被害者を発見、警察に連絡をした。
「おっと、これは想像よりむごいな」
現場に駆けつけた波田の第一声はそれであった。
刑事という職務を20年以上も続けていれば凄惨な殺人現場に立ち合うこともある。
同僚や先輩からの"ここだけの話"も嫌というほど聞いた。
それらの経験と安岡からの現場の状況を照らし合わせて予想していた被害者の状態。
現場に転がった無惨な姿は、その状態をも上回る凄惨なものであった。