DECIMATION~選別の贄~
「え……ネクロフィリア?」
思わず口に出した安岡を波田は頭を叩いて止めた。
安岡は賑わうレストランの客に聞こえなかったか辺りを少し見渡した。
そして誰にも聞こえていない、聞こえていたとしても意味を理解していないことを確認して息を吐いた。
「ネクロフィリア……確か屍姦愛好者のことでしたよね。じゃあ犯人は死体と性行為をもつことを目的としている?
つまり、先日の女性は強姦された後に殺害されたのではなく、殺された後で辱しめられた。
ということですか?」
「……言っててへどが出るがそういうこったろう。
司法解剖の結果から見ても女性は死後に首と四肢を切り取られて性的な暴行を受けている」
他の客には聞こえないように細心の注意を払いながら二人は会話を続ける。
「でも、犯人が捕まるのは時間の問題ですよね?だって犯人の体液も見つかってるわけだしDNA鑑定で、過去の犯罪者とかから絞り出せば」
安岡は自ら言葉を遮った。
目の前にいる波田の不安そうな顔を見たからである。
「犯人はわざわざ遺体の一部を持って帰ったり、顔が胴体を覗き込むような位置に置いたり何かしらの目的を持って犯行に及んでいる。
そんなやつが果たして体液なんか簡単に残すものだろうか?」
波田はぼそっと呟いて、冷めきったグラタンを口に運んだ。
安岡はドリンクバーの四杯目になるコーラを一口飲んでから口を開く。
「もし計画的に犯行に及んだとして、そういうのが趣向なやつなら衝動的に体液が残ってしまってもおかしくはないんじゃないですか?」
「まぁな、そうとも思える」
波田は隅にこびりついた焦げたチーズをスプーンでこそぎおとす。
そして香ばしいチーズを堪能する。
「なんにせよ事件がこれで終わってくれたら良いんだがね」
「そう、ですね」
二人の刑事の呟きから10時間後。
朝方に公園を散歩をしていた男性からの通報で二人は落胆することとなる。
第二の犠牲者が見つかったのだ。