DECIMATION~選別の贄~
「これはバカップル。これは付き合いたて?これは…………
デブ男の援交」
郊外にあるカップルズホテルで働く男がいた。
北川 正、32歳にして独身。
女性経験は一度きりで、それも酔った勢いで風俗店で童貞を捨てた。
ぼさぼさ伸びる髪に黒ふちのお洒落さなど欠片もない眼鏡。
吹き出物でぶつぶつの顔は脂汗でてかっている。
業務内容は主にベッドメイキングとキッチン業務。
とはいえ作る料理はほとんど電子レンジによるものであるが。
「おーおー、激しく腰ふっちゃって元気だねー。かっかっか」
事故防止用の防犯カメラは通常観られることはない。
何か事件が起こった時や、中での違和感を感じ取った時のみに限られて観られるものである。
「また人様の行為覗き見してるよ。あのキモ男。
なんで店長何も言わねぇの?」
「さぁ。何かあの男に弱味でも握られてるんじゃない?」
共に働く小林と中田はそう言って、今しがた帰っていったカップルの部屋の掃除へ向かった。
「聞こえてるんだよクソ虫が。
お前らみたいなのには分からないよ、ねぇ?」
そう言って画面の向こうで少女に札を渡す男に問いかけているようにも見えた。
画面の向こうでは札束を鞄に入れた少女がベッドの上で仮初めの愛を受けている。
「分かるよ。分かるよオッサンの気持ち」
行為はどんどん激しくなり、少女から小さく漏れていた吐息に代わって、大きなあえぎ声が部屋に響き始めた。
汗をかきながら必死で腰を振る男が叫びと共に果てると、少女はすぐに繋がっていた男性器を抜いて汚れた身体を拭き始めた。
「あーあ、なんでわかんねぇかなぁ。
金を出したのは気持ちよくなりたいからじゃなくて、この後の時間の為なのになぁ。なぁ?」
少女はすぐに服を来て、全裸で果てた男をベッドに残して部屋を出ていった。
「分かるぜオッサン。大丈夫だ、あんたの想いは届けてやるよ。かっかっか」