DECIMATION~選別の贄~
安岡は波田の言葉に、自分には思いもよらぬ可能性を示唆されていることに気づき考えを巡らせるが答えは一つしかでてこなかった。
安岡は頷く。
「ひ、被害者の身体から見つかった体液が全て異なるDNAであることからも加害者が一人ではないことが証明されていると考えます。
波田警部はそうではないとお考えなのですか?」
言葉の全てに配慮しながら安岡はそう考えを述べる。
波田はゆっくりと頷いた。
その表情は柔らかい。
「確かにその通りだ捜査官が100人いたら94人はそう考えるだろう」
「94人?あとの6人はどう考えるのですか?」
安岡は純粋な疑問から眉をひそめていた。
波田は雲の切れ間から少しだけ覗く青い空を少し見つめた。
「そのことにすら気づかず無駄に走る無能が5人。
そして、今回の犯人が固着した思想の元に、何らかの方法を持って複数の体液を入手し、あたかも複数犯であるかのように偽装している。と考える馬鹿者が1人だ」
「5人の無能と1人の馬鹿者……」
波田はコートのシワを手で伸ばし、真っ直ぐに安岡の顔をみる。
「お前はそんな馬鹿者についてくるつもりはあるか?」
安岡は貫かれる。
元より警視庁に入った時から、セオリーに縛られずに常に広い視点を以て捜査に当たることができる捜査官になると考えていた。
今、自分の目の前にはその理想に限りなく近いのであろう男がおり、尚且つ自分に着いてこいと言っている。
「……ははっ」
安岡の返事は決まっている。
「ついていきますよ何処までも。でもこれで100人中の馬鹿者が2人になってしまいましたがね」
「はっ、分かってるじゃねぇか」
二人は部屋を出ていく。
凶悪でまれにみるような残虐な連続殺人の捜査でありながら安岡の胸は高鳴っていた。
波田は馬鹿者の数を変えようとは思わない。
その中に犯人への憤りがあるのかないのかが馬鹿者と真に優秀な捜査官との差があると考えていたからだ。
安岡はこれから波田の期待通りの捜査官に成長していく。
しかしそれが安岡の凄惨な末路を決定付けてしまうことを、波田は後悔するのすら遅いほど後に知るのであった。
安岡は頷く。
「ひ、被害者の身体から見つかった体液が全て異なるDNAであることからも加害者が一人ではないことが証明されていると考えます。
波田警部はそうではないとお考えなのですか?」
言葉の全てに配慮しながら安岡はそう考えを述べる。
波田はゆっくりと頷いた。
その表情は柔らかい。
「確かにその通りだ捜査官が100人いたら94人はそう考えるだろう」
「94人?あとの6人はどう考えるのですか?」
安岡は純粋な疑問から眉をひそめていた。
波田は雲の切れ間から少しだけ覗く青い空を少し見つめた。
「そのことにすら気づかず無駄に走る無能が5人。
そして、今回の犯人が固着した思想の元に、何らかの方法を持って複数の体液を入手し、あたかも複数犯であるかのように偽装している。と考える馬鹿者が1人だ」
「5人の無能と1人の馬鹿者……」
波田はコートのシワを手で伸ばし、真っ直ぐに安岡の顔をみる。
「お前はそんな馬鹿者についてくるつもりはあるか?」
安岡は貫かれる。
元より警視庁に入った時から、セオリーに縛られずに常に広い視点を以て捜査に当たることができる捜査官になると考えていた。
今、自分の目の前にはその理想に限りなく近いのであろう男がおり、尚且つ自分に着いてこいと言っている。
「……ははっ」
安岡の返事は決まっている。
「ついていきますよ何処までも。でもこれで100人中の馬鹿者が2人になってしまいましたがね」
「はっ、分かってるじゃねぇか」
二人は部屋を出ていく。
凶悪でまれにみるような残虐な連続殺人の捜査でありながら安岡の胸は高鳴っていた。
波田は馬鹿者の数を変えようとは思わない。
その中に犯人への憤りがあるのかないのかが馬鹿者と真に優秀な捜査官との差があると考えていたからだ。
安岡はこれから波田の期待通りの捜査官に成長していく。
しかしそれが安岡の凄惨な末路を決定付けてしまうことを、波田は後悔するのすら遅いほど後に知るのであった。