満月の人魚

車に乗り込むと周りの好機な視線から解放され、ほっと息をつく。

程なくして車は静かに走り出した。

「今日はHRが早く終わったんだ。というか瑠璃のクラスは遅かったんだな。クラスで何かあったのか?」

「ああ、今日転入生が来たから、連絡事項に時間がかかったの。」

「この時期に転入生か?」

ふーん、なんて呟きながら窓の外を眺める零士の横顔を見ながら、瑠璃は痛む頭を軽く押さえる。

時々ふとした時に頭痛に悩まされる。最近は落ち着いていたのに、今日はどうしたのだろうか。

頭痛は朝から断続的に続いていた。

(やだ、また兄さんに心配かけて過保護に拍車をかけちゃうわ。)
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