満月の人魚
「瑠璃、大丈夫か⁉︎」

黒沢の少し焦った顔を見て、ようやく我に返った。

「……うん。…ありがとう…ございます。」

なんで敬語?と笑う黒沢を見て、瑠璃もようやく安堵した。

強張った身体から徐々に力が抜けていく。

昨日からこんなんばかりだな、と顔を見合わせて笑ってしまう。

今の出来事の所為で、先程胸に息巻いていた怒りの感情はどこかに吹き飛んでしまったようだ。

(我ながら単純ね。でも…どこか憎めない人。)

怖い思いをした後のせいか、笑いが止まらない。

「やっと笑ったな。」

「え?」

「やっと笑った。」

黒沢は眩しいものを見るかのように目を細めて瑠璃の事を見ていた。








その一部始終を濱田が睨みつけるように見ていた事を、この時の二人は気づく筈もなかった。
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