満月の人魚
瑠璃は黒沢が転入してきてからの事を思い返していた。

零士以外とはあまり関わりを持たない瑠璃にとって、黒沢の存在は極めて異色である。

端整な顔立ちにころころ変わる表情。どこか人懐っこさを感じる性格は、人と距離を置いて接する瑠璃の心に存在感を持ってするりと入ってくるものでー

(不思議ね、知り合ったばかりなのに…。)

どこか懐かしささえ感じるなんて。

ふと黒沢の言葉が頭の中に響く。

“昔は名前で呼び合ってただろ”

そんな記憶はない。

しかし黒沢が嘘をつく理由も見当たらない。
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