満月の人魚

音楽室

丈瑠から薬の話を聞いて、数日が経っていた。

あれから瑠璃は自分の記憶を整理してみたが、零士を追いかけるようにこの海成高校に入学する前の記憶があやふやでどうしても思い出せなかった。

丈瑠がちらつかせる自分との接点は、きっとそのあやふやな時期のものなんだろうと推測される。

あれから丈瑠とはあまり言葉を交わす事もないが、時折視線を感じて振り向くとそこには自分をじっと見ている丈瑠がいる。

目が合うとおどけて手を振ってきたりするが、優しく見守っているというよりはー

(周囲を警戒して神経張り詰めてる感じね。)

そう思うのは瑠璃を見つめる丈瑠の目が真剣そのものだからだ。

(〝守る〟って言ってたわ。…何から?)
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