満月の人魚
歌い始めてしばらくして、先生の体がぐらんぐらんと横に大きく揺れ出した。

(リズムをとっているのかしら?それにしては振りが大きいみたい。)

瑠璃は訝りながらも歌い続けていたのだが、先生の体はついにヴァーンという派手な音をたてて鍵盤の上に倒れ込む。

瑠璃は驚いて声を掛けた。

「先生!どうされました?」

慌てて顔を覗き込んで見れば、先生は気を失って倒れているようだ。

(息は…してるみたいね。でもなんで。どうしよう。)

とにかく人を呼ぼうと中扉に向かおうとすれば、そこから眉間に皺を寄せた丈瑠が入ってきた。

テストは自分の番なのになぜ丈瑠が?しかし来てくれたのは助かった。

瑠璃はとにかく状況を説明しようとしたが、それより早く丈瑠が口を開いた。

「先生なら当分は起きないぞ。」
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