満月の人魚
「え?」

「瑠璃の歌声を間近で聴いたせいだ。」

言いながら先生の体を担ぎ上げ、ゆっくりと床に寝かせようとしている。

「私の…歌声…?」

訳がわからない。瑠璃はただ真面目に歌のテストを受けていただけだ。

「……どうして…。」

呆然として立っていると、丈瑠が中扉を開け、見てみろ、と視線で促してくる。

そこには話し声で賑やかな音楽室が広がっているはずー

そう思って視線を移し、瑠璃は愕然とした。

あんなに私語で溢れかえっていた音楽室はしんと静まりかえり、皆机に突っ伏している。

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