満月の人魚
丈瑠が指定してきたのは学校から程近い海浜公園だった。

海が見渡せる開けた場所に待ち合わせの目印である時計が立っている。

瑠璃が着くとそこにはもう丈瑠の姿があった。

「よう。早かったな。」

「あなたこそ。まだ待ち合わせ10分前よ。」

待ちきれなくて早く出てきた、と笑う丈瑠の顔は、心なしか少し緊張しているように見える。

「……一人で出てこれたか?」

「ええ、ちょっと大変だったけれど。」

瑠璃は普段一人では出歩かない。今日も、出かけると言うなり零士が自分もついていくと言い出したのだ。それを丁重に断って、ここまで辿り着いたのだった。

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