満月の人魚
瑠璃は写真の中の自分をもう一度見てみる。

この写真を撮った時の記憶はないが、幼い丈瑠の横で微笑んで写っている。
それは、今の瑠璃にはあまり見られない程穏やかで満ち足りた表情だった。
それをどこか不思議な気持ちで眺める。

すると、その様子を見ていた丈瑠が心配そうな顔で尋ねてきた。

「……大丈夫か?」

「え?」

「いや、その……悪い。一気に話しすぎた。瑠璃の気持ちも考えないで…。」

やっと話せると思ったら止まらなかった、とこぼす丈瑠は、バツの悪い顔で下を向いている。
瑠璃の心情を思いやってくれたらしい。

「……この写真が無ければ、とてもじゃないけれど信じられなかったと思うわ。……でも、色々と辻褄は合う。」


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