満月の人魚
次の日の昼休み、瑠璃は丈瑠に零士との婚約の話を打ち明けた。

屋上はいつもより少し強めの風が吹いている。

丈瑠は終始難しい顔をして瑠璃の話を聞いていた。

「いよいよ瑠璃を天野から逃がさない気だな。」

丈瑠が苦い顔で告げる。

「私、拒みきれなかったわ。…父の事が昔から怖いの。」

瑠璃は項垂れながら丈瑠に本音をこぼした。

父の事もあるが、瑠璃にとって零士は兄として慕ってはいるがそうゆう対象ではないし、第一瑠璃の事をどこまで知っているのか分からない。

(それに……私は丈瑠の事が…)

瑠璃の中で気持ちが落ち着かないのは丈瑠との事も理由としてあった。

丈瑠にほのかな想いを抱いているのに、零士との婚約を拒みきれなかった事は、瑠璃に軽い罪悪感を抱かせた。
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