満月の人魚
約束の時間がせまるなか、瑠璃の部屋にドアをノックする音が響いた。

(こんな時間に何の用かしら?)

扉を開けてみると零士が立っている。

「やあ、瑠璃。まだ起きていてくれて良かったよ。父さんが呼んでいるんだ。何でも今後の話をするとかで。」

柔和な顔に困ったといったような表情をはりつけて頭を掻いている。

さりげなく時計を見ると時刻は11時30分になろうとしているところだった。

(下手に断って変に勘繰られても困るわね。)

あと30分程でこの家を後にするが、それまではあくまでもいつも通りを装わなければならない。

「わかったわ。」

瑠璃は零士の後について、父の書斎に行くことにした。
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