満月の人魚
シュッと空気を切り裂く音が聞こえた気がした。

零士の振り上げた右手は父の首の後ろを強打して、父は声を出す隙もなく意識を失った。

「……どうして…」

瑠璃は零士の行動を呆然と見ていた。

「彼は味方だ。俺をこの部屋まで案内してくれたのは他ならぬ彼だ。」

零士と協力して、気絶した父をソファに運びながら、丈瑠が答える。

「とにかく話は後だ。今はこの部屋から離れよう。」
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