満月の人魚
零士
瑠璃と丈瑠は零士の後について天野邸の中を歩いていた。
「驚かせてすまなかったね、瑠璃。瑠璃が僕との婚約を望んでいない事はわかっていたよ。思いつめた行動に出るんじゃないかって心配していたんだ。」
やや急ぎ足で歩を進める零士は、それでも穏やかな声音でそう瑠璃に告げた。
瑠璃はほっと安心すると共に、零士ともっと話し合いをするべきだったと今更ながら思う。
この兄は、瑠璃が今夜内緒で家を出る事を承知の上で丈瑠を家に招き入れ、父の書斎まで彼を案内してくれたのだ。
「私の方こそごめんなさい。……こんなことになるなら、最初から兄さんに相談すれば良かった。」
「瑠璃が僕を信用出来なかったのは仕方ないよ。…瑠璃がこの家に来た時の事、はっきりと覚えている。憔悴して、全てを諦めたような表情をしていたな。父さんに詳しい事は聞かなかったけれど、僕はずっと本当に家族だと思って接してきたんだ。」
零士は優しい顔で微笑みながら瑠璃の顔を見ている。
その顔を見て、瑠璃も安堵の表情を浮かべる。
この家で過ごした今までの生活全てが偽りではなかったかと思うと、心が少し温かくなった。
「今は話しこんでいる場合じゃなかったね。さあ、入って。」
「驚かせてすまなかったね、瑠璃。瑠璃が僕との婚約を望んでいない事はわかっていたよ。思いつめた行動に出るんじゃないかって心配していたんだ。」
やや急ぎ足で歩を進める零士は、それでも穏やかな声音でそう瑠璃に告げた。
瑠璃はほっと安心すると共に、零士ともっと話し合いをするべきだったと今更ながら思う。
この兄は、瑠璃が今夜内緒で家を出る事を承知の上で丈瑠を家に招き入れ、父の書斎まで彼を案内してくれたのだ。
「私の方こそごめんなさい。……こんなことになるなら、最初から兄さんに相談すれば良かった。」
「瑠璃が僕を信用出来なかったのは仕方ないよ。…瑠璃がこの家に来た時の事、はっきりと覚えている。憔悴して、全てを諦めたような表情をしていたな。父さんに詳しい事は聞かなかったけれど、僕はずっと本当に家族だと思って接してきたんだ。」
零士は優しい顔で微笑みながら瑠璃の顔を見ている。
その顔を見て、瑠璃も安堵の表情を浮かべる。
この家で過ごした今までの生活全てが偽りではなかったかと思うと、心が少し温かくなった。
「今は話しこんでいる場合じゃなかったね。さあ、入って。」