満月の人魚
零士の後について連れてこられた場所は、何故かキッチンだった。

瑠璃は不思議に思いながら零士に尋ねる。

「兄さん、なぜキッチンに?」

「……瑠璃はそこの彼と一緒にこの家を出ていくつもりなんだろう?」

零士は流し台に手をつき、瑠璃と丈瑠には背を向けている為にその表情は見えない。

「……ごめんなさい。でも私、もうこの家にはいられないわ。」

「どうしてもかい?」

「……ええ。私、彼と…丈瑠と一緒にいくわ。」

「そうか」

零士がゆっくりとこちらを振り向く。

その手には、何か銀色に光る物が握られている。
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