ロリポップ
 『女として見られなくなった』



 そう、文哉は言ったけど。
 
 最初から『彼女』として見られていたかさえ、今となっては疑問に思える。
 
 出会いは合コン。付き合い始めたその日のうちに体を重ねた私達。
 
 と言うよりも、なんとなくいいなって思ってた文哉に誘われて、抜け出した私たちは気が付けばホテルにいた。
 
 少し気の強そうな瞳の文哉はハッキリ言って私の理想のタイプの男だった。
 顔もだけど、くっきりと浮き出る鎖骨とか細いのにしなやかな筋肉の付いた体とか、大きくて節の少し目立つ長い指とか・・・・・。
 
 見た目は私の理想そのもの。
 
 そんな理想が現実化したような文哉に夢中になってしまった私。
 
 
 会ったその日にやってしまうなんて、今までの人生であの時だけ。
 
 私にとっては結構な決断をしたあの日。
 
 そのまま別れたくなかった。だから、求められるのも嬉しかった。
 

 でも、今更だけどあの時点で気づくべきだったと思う。
 
 初対面の女を抱いてる時点で軽く見られていたと。
 
 私の気持ちなんて考えてるわけはない。
 
 ヤレる女がそこに居たからヤッたって事ぐらいの事だったんだ。
 
 でも、私が、付き合いたいって言ったから、だから文哉は「いいよ」って言ったんだ。
 
 それは、ジュースを飲んでもいい?って聞かれた時くらいの気軽な返事。
 
 私の存在はそんなものだったんだ・・・最初から。


 私の想いと反するように冷めていった文哉の言葉を思い出す。


 『女として見れなくなった』


 違う・・・抱きたい女が別に出来たからお前に用はないって事じゃん・・・。


 あぁ・・・また、考えてる。
 落ち込むのに、考えてる。
 忘れてしまいと涙が出るのに・・・・・。

 優しくなんかなかった。
 自分勝手でわがままで。
 短気で好き嫌いも多くて。
  



 でも・・・好きだった・・・・。



 そんな事を考えていたら ダメなのは自分だったんじゃないかって。
 
 ダメなのは・・・私?





 
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