ロリポップ
『やっと出た~』
そう言った恩田君の、安心したようなちょっと間伸びた声が聞こえた。
「ごめん、マナーモードにしてたの忘れてて。それより、具合はどう?」
あんなに緊張してとった電話だったのに、恩田君の声を聞いたらふっと和んでしまった。
バクバクだった心臓も、じっとり汗ばんでいた手のひらも嘘のよう。
やっぱり和むわ~いつもの恩田君。
平常心を取り戻した私はちゃんと?恩田君の様子を聞く。
『もうすっかり熱も下がりました。すみませんでした・・・熱があったとはいえ、逢沢さんに無理をお願いして。逢沢さん、いつ帰ったんですか?僕が目が覚めたときには居なくて・・・。一瞬、逢沢さんが看病してくれたとか、夢なんじゃないかって思いました。書置き見るまでは』
最後のほうは少し笑って言う恩田君の言葉に、少しホッとする。
やっぱりあの時は眠っていたんだ。
病人を襲うとか私の恥ずかしい、というかありえない行動を知られなくて良かったと心底思う。
神様、二度としません。
・・・多分。
絶対に、と言えない自分が恨めしいけれど、昨日みたいな状況になった時にしないと言い切れない自分が居るのも事実。
ホント、欲求不満かって話だよ・・・。
セックスがしたいって言うよりも、ただ、触れるだけでいいからキスしたい衝動に駆られた自分を止められる自身が無い。
だから、絶対に、なんて言えない。
キスの甘い感情は、まだ私の中で消えずにじわじわと染み込んで来る。
『逢沢さん?』
「ん?ああ、昨日ね。朝帰ったよ。多分9時半過ぎくらいかな?恩田君、眠ってるみたいだったから声掛けなかったけど。良くなったならよかったよ。昨日、会社で見つけた時はどうしようって、本気で焦ったよ~」
昨日の雪の雫の滴り落ちる恩田君の前髪。
冷えて白くなった氷のような指先。
濡れたコートの肩。
熱く潤んだ瞳。
全部が初めてみるいつもと違う恩田君で、和まなかった恩田君。
すみませんでした、という恩田君に、明日もゆっくり休むように言った。
『おやすみなさい』
そう言う声が優しくて、久しぶりに誰かにおやすみと言われた事がジンわりと胸に染みた。
思っていたよりも、私は寂しかったのかもしれない。
特別な言葉じゃないのに、おやすみの一言に胸が一杯になるなんて。
「おやすみなさい」
少し震えた声に恩田君は気がついたかもしれない。
けれど、また、おやすみなさい、と言った。
そして、電話は切れた。
そう言えば、今の電話が恩田君から掛けてきた二回目の電話だった事に気がつく。
番号教えてください、って聞いてきた割には、全然掛けてこなかったじゃない、と切れた電話に呟く。
最初の電話は忘れ物。
二回目は所在確認・・・。
番号を教えてから、一ヶ月以上経ってんですけど?
なんかもっと違う電話とかしてきてもいいのに、と思ってしまう。
そう言った恩田君の、安心したようなちょっと間伸びた声が聞こえた。
「ごめん、マナーモードにしてたの忘れてて。それより、具合はどう?」
あんなに緊張してとった電話だったのに、恩田君の声を聞いたらふっと和んでしまった。
バクバクだった心臓も、じっとり汗ばんでいた手のひらも嘘のよう。
やっぱり和むわ~いつもの恩田君。
平常心を取り戻した私はちゃんと?恩田君の様子を聞く。
『もうすっかり熱も下がりました。すみませんでした・・・熱があったとはいえ、逢沢さんに無理をお願いして。逢沢さん、いつ帰ったんですか?僕が目が覚めたときには居なくて・・・。一瞬、逢沢さんが看病してくれたとか、夢なんじゃないかって思いました。書置き見るまでは』
最後のほうは少し笑って言う恩田君の言葉に、少しホッとする。
やっぱりあの時は眠っていたんだ。
病人を襲うとか私の恥ずかしい、というかありえない行動を知られなくて良かったと心底思う。
神様、二度としません。
・・・多分。
絶対に、と言えない自分が恨めしいけれど、昨日みたいな状況になった時にしないと言い切れない自分が居るのも事実。
ホント、欲求不満かって話だよ・・・。
セックスがしたいって言うよりも、ただ、触れるだけでいいからキスしたい衝動に駆られた自分を止められる自身が無い。
だから、絶対に、なんて言えない。
キスの甘い感情は、まだ私の中で消えずにじわじわと染み込んで来る。
『逢沢さん?』
「ん?ああ、昨日ね。朝帰ったよ。多分9時半過ぎくらいかな?恩田君、眠ってるみたいだったから声掛けなかったけど。良くなったならよかったよ。昨日、会社で見つけた時はどうしようって、本気で焦ったよ~」
昨日の雪の雫の滴り落ちる恩田君の前髪。
冷えて白くなった氷のような指先。
濡れたコートの肩。
熱く潤んだ瞳。
全部が初めてみるいつもと違う恩田君で、和まなかった恩田君。
すみませんでした、という恩田君に、明日もゆっくり休むように言った。
『おやすみなさい』
そう言う声が優しくて、久しぶりに誰かにおやすみと言われた事がジンわりと胸に染みた。
思っていたよりも、私は寂しかったのかもしれない。
特別な言葉じゃないのに、おやすみの一言に胸が一杯になるなんて。
「おやすみなさい」
少し震えた声に恩田君は気がついたかもしれない。
けれど、また、おやすみなさい、と言った。
そして、電話は切れた。
そう言えば、今の電話が恩田君から掛けてきた二回目の電話だった事に気がつく。
番号教えてください、って聞いてきた割には、全然掛けてこなかったじゃない、と切れた電話に呟く。
最初の電話は忘れ物。
二回目は所在確認・・・。
番号を教えてから、一ヶ月以上経ってんですけど?
なんかもっと違う電話とかしてきてもいいのに、と思ってしまう。