ロリポップ
食後のコーヒーを飲む頃まで、友華はあまり口を開かずちょっと拍子抜けする。

 きっと、何で電話して来なかったのよ!と聞かれると思っていたのに。

 嵐の前の静けさ?


「ねえ、音羽と恩田君はどういう関係なの?」


「え?」


 予想とは違う問いに視線を上げると、その先に友華のまっすぐな瞳があった。
 
 
「どんなって?」


「音羽・・・いい大人にどんな関係かって聞いたら大体分かるでしょ?そういう関係なのかって聞いてるのよ」


 ああ、そういう事。
 要するにセックスする関係かってことね。


「違うけど」


「じゃあ、友達って事?」


 何で友華がそんな事を聞いてくるのか、理由が分からない。
 しかも相手は恩田君で、関係があるかどうかなんて・・・。


「どうして?どうしてそんな事聞くの?」


「・・・金曜日、恩田君と帰ったでしょ?あれ、ちょっとした噂になってるのよ?知らないの?」


 初耳だった。
 大体、残業で遅くなったあの日、エレベーターを降りたのは私だけだった。
 誰かにあった記憶はないのに、そんな噂が立つなんて。


「確かにあの日、恩田君と帰ったけど・・・恩田君が熱があってフラフラだったからで」


「そういう事か・・・。でも、誰かが故意に流した噂みたいよ。妙に詳細だったし」


 それを聞いて、私と恩田君が帰る事を知っていた人が居た事を思い出す。
 最初にのろうとしたエレベーター、恩田君と一緒に瀬名さんも乗っていた。
 彼女なら恩田君が私を待っていたことも知っている。
 確かではない、私の憶測だから友華にも言えないけど、多分そうだ。



「別に私はいいと思うよ、二人ともフリーなんだし?って、恩田君、彼女いないんでしょ?」


 何をして、彼女が居ない事を確信してるのか分からないけれど。


「・・・そういう関係じゃないし。第一、看病しただけだし・・・」


「看病したんだ~・・・気になる存在って訳?」


「別に・・・39度もある人、置いて帰れなかっただけだし・・・」


 
 気になる存在・・・。確かに気になる存在だ。
 気になりすぎる存在になりつつある・・・。



「・・・・ねぇ・・・・・友華は、自分からキスしたいとか・・・・・思った事、ある?」


 恥ずかしい質問をしていると分かっている。
 友華の見開いた瞳に言わなかったら良かったと、後悔したけれど。
 でも、確認しておきたかった。
 
 そんな風に思う私は大丈夫なのか。
 

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