ロリポップ
キスしてもいいですか?
 お正月休みもあっという間に終わって、新しい年の仕事が始まる。
 
 休み明けの今日、久しぶりに会った友華の左手には、煌く婚約指輪があった。


「驚かせようと思って、教えなかったの」

 
 と悪戯っぽく微笑むその顔は、幸せそうで輝いていた。

 瑛太もちゃんと考えてたんだなって、妙に感心してしまった。

 飄々としていて、結婚とか考えてるの?って感じだったのに。

 なにはともあれ、2人が結婚する事は私にとっても嬉しい事だ。


 「友華、瑛太をよろしくお願いします」


 そういう私に友華は、「もちろん!」と満面の笑みを浮かべた。

 素直に良いなぁって思う。

 幸せそうに輝く友華の笑顔が。

 羨ましいな・・・・・。


「音羽は、年末年始に何か変化は無かったの?」

 話を振られて、言葉に詰まる。

 ありましたよ、大きな変化が。

 ワクワクとした瞳をむける友華にちょっとイラッとしながら、ランチのA定食をほお張る。

 ちなみに今日は、鳥の照り焼きとコールスロー、かぼちゃの煮物。
 

「彼女がいた」


「は?」


「だーかーら!彼女がいたの!」


 何度も言わせないでよ。
 言いたくないんだから。
 聞き返す友華を睨みながら、かぼちゃの煮物をブスッと突き刺す。


「一緒に買い物してた。家の近所のスーパーで」


 一口でかぼちゃを口に突っ込んで、咀嚼しながら友華を見ると信じられない!といった顔で私を見ていた。
 本当、信じたくないけど、見ちゃったんだから仕方ないでしょ・・・・・。


「本当に彼女なの?確かめた?」


「確かめられるわけないでしょ?傷口に塩を塗る気はないし。彼女だって言われるの、怖いんだもん・・・・・」


 確認したくないわけじゃない。
 でも、それを聞くだけの勇気は無い。
 


「はぁ~、恩田君、彼女いないんじゃなかったの?いつ出来たの?」


「そんなの・・・私が知ってるわけ無いじゃない。こっちが聞きたいわよ」


 2人で新年早々、溜息をついてランチタイムは終わった。


 
 相変わらす、恩田君とは会社で顔を合わせることは少なかった。
 
 瑛太にあったのも、仕事始めの次の日で、結婚するんだって~?と冷やかすと、「まあね」と口の端をニヤッとあげて笑った。
 
 お前も早く結婚しろよ、なんて言わないのが瑛太らしい。

 言われてたら間違いなくグーで殴ってたかもしれない。

 大きなお世話じゃ~!!!って。




 
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