ロリポップ
仕事が始まって一週間が過ぎた。
恩田君を見かけたのは一度だけ。
本当に会わないもんだなって思う。
同じ会社にいるのに、朝も帰りも一緒になることも無い。
一度見かけたのも後姿だった。
走って正面玄関を出て行く恩田君の後姿が、やけに遠く感じて、私から電話もメールもしていなかった。
特に用事も無いのに、しちゃいけないような気がして出来なかった。
彼女が知ったら、きっといい気はしないはず。
そう思うと、声を聞きたくても発信のボタンは押せない。
林田くんじゃないけれど、恋人持ちの人を好きになるって不毛過ぎる。
報われないと思いながら相手を想うなんて、不毛すぎて時間がもったいないじゃない、って少し前の私なら言っていた。
でも、今は違う。
不毛過ぎるって分かってても、想う気持ちが止められないからって、今なら分かる気がする。
片思いってホント、切ないよね。
片思いは恋愛のうちに入らないって、高校生の時に友達に言われたけど、こんなに胸が痛いのに恋愛のうちに入らないなんて、あんまりだと思う。
一方通行でも恋は恋、なんじゃないかな・・・・。
ただ、思うだけの恋があっても、いいと思う。
乙女チック症候群の私が言うのもなんだけど。
私は定時で仕事を終え、会社を後にした。
友華は結婚式の準備やらで忙しいみたいで、今週は予定が詰まってるらしい。
そうだよね、式場選びにウェディングドレス、招待状に招待客、料理にお返し物に・・・・・って色々あるものね・・・。
マフラーを巻いて、一歩外へ出ると薄暗くなった通りは冷たい風の通り道になっていた。
思わず身震いする寒さに首をすくめて、駅に向かう。
横断歩道の信号が青の点滅になって、急いで渡ろうと足を踏み出した時、強い力に引っ張られて体が後ろに引かれた。
驚いて振り返ると、一週間以上ぶりの恩田君が白い息を吐きながら、私の腕を掴んでいた。
「お・・・んだ君」
驚きで途切れる私の呼ぶ声に
「すみません、びっくりさせましたね」
と呼吸を整えて、そっと掴んだ手を離す。
「ご飯、食べにいきませんか?」
「え?」
「ご飯食べに行きましょう」
そう言うと青になった横断歩道を渡らずに、飲食店が多く並ぶ通りへと進んでいく。
「えっ?ちょ・・・待ってよ、恩田君?」
先に歩いて行く恩田君を追いかけて、結局私も後に続いた。
恩田君を見かけたのは一度だけ。
本当に会わないもんだなって思う。
同じ会社にいるのに、朝も帰りも一緒になることも無い。
一度見かけたのも後姿だった。
走って正面玄関を出て行く恩田君の後姿が、やけに遠く感じて、私から電話もメールもしていなかった。
特に用事も無いのに、しちゃいけないような気がして出来なかった。
彼女が知ったら、きっといい気はしないはず。
そう思うと、声を聞きたくても発信のボタンは押せない。
林田くんじゃないけれど、恋人持ちの人を好きになるって不毛過ぎる。
報われないと思いながら相手を想うなんて、不毛すぎて時間がもったいないじゃない、って少し前の私なら言っていた。
でも、今は違う。
不毛過ぎるって分かってても、想う気持ちが止められないからって、今なら分かる気がする。
片思いってホント、切ないよね。
片思いは恋愛のうちに入らないって、高校生の時に友達に言われたけど、こんなに胸が痛いのに恋愛のうちに入らないなんて、あんまりだと思う。
一方通行でも恋は恋、なんじゃないかな・・・・。
ただ、思うだけの恋があっても、いいと思う。
乙女チック症候群の私が言うのもなんだけど。
私は定時で仕事を終え、会社を後にした。
友華は結婚式の準備やらで忙しいみたいで、今週は予定が詰まってるらしい。
そうだよね、式場選びにウェディングドレス、招待状に招待客、料理にお返し物に・・・・・って色々あるものね・・・。
マフラーを巻いて、一歩外へ出ると薄暗くなった通りは冷たい風の通り道になっていた。
思わず身震いする寒さに首をすくめて、駅に向かう。
横断歩道の信号が青の点滅になって、急いで渡ろうと足を踏み出した時、強い力に引っ張られて体が後ろに引かれた。
驚いて振り返ると、一週間以上ぶりの恩田君が白い息を吐きながら、私の腕を掴んでいた。
「お・・・んだ君」
驚きで途切れる私の呼ぶ声に
「すみません、びっくりさせましたね」
と呼吸を整えて、そっと掴んだ手を離す。
「ご飯、食べにいきませんか?」
「え?」
「ご飯食べに行きましょう」
そう言うと青になった横断歩道を渡らずに、飲食店が多く並ぶ通りへと進んでいく。
「えっ?ちょ・・・待ってよ、恩田君?」
先に歩いて行く恩田君を追いかけて、結局私も後に続いた。