死んだら天国だなんて、嘘だ
紛れもない『本物』であった。
霊と言うよりは呪い。薄気味がって、元からあった墓を他所へ移す親族もいるのだから、土地の管理者も泣くしかない。
取り壊しも出来ない、見えない境界線(紐)で囲われたかのような墓場は街の隅にひっそりと在り続ける。
「とか何とか言われて、最近はめっきり人が来なくてねぇ。退屈していたんだよ。自殺志願者さん」
丑三つ時の墓場に現れた人物を、墓場の住人は歓迎する。
『稲見』(いなみ)と彫られた墓であるが、盆であっても参る親族はいないのか荒れていた。
「墓を綺麗にしないから怒り祟った、的な感じで人を殺しているワケじゃないですよね、殺人幽霊さん」