砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
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ハーレムに戻り、すぐにリーンを呼び出したものの現れる気配はない。

サクルが寝所で待つと、正妃の選んだ夜伽の女を通してもよいか、と尋ねられた。


(リーンめ……本気で怒ったとみえる。いや……私が夜伽の女を抱いても、もはや、どうでもよいという意味ではあるまいな!?)


リーンの心の内を計りかねて、ろくに返事もしないサクルの前に、白い夜着を纏った女が姿を見せた。

黒く艶やかな髪に、ほんの一瞬だけ心が揺れる。

だが、リーンの顔を思い出し、慌てて意識を散らした。


「伽は不要だ。そのまま下がるがよ……い」


途中で女が顔を上げ、サクルは息が詰まる。

そこには優しいブラウンの瞳に涙を湛えた、リーンが座っていた。


「リーン!? おまえは、いったい何をしているのだ」

「夜伽の女が必要とおっしゃいましたので、わたしでは……ダメですか?」

「ダメも何も、そもそもおまえが」


サクルとふたりきりになることを避け、子供の世話に夢中だったのは彼女のほうだ。

それがなぜ、こんな場所にいるのか、サクルにすればわけがわからない。


「双子でしたので、お腹も普通より大きくなってしまいました。そのせいで、子を孕んだ痕が残ってしまって……。あちこちにも余分なお肉がついてしまい……サクルさまのお気に召していただけないかもしれません」


そんなことを言いながら、リーンは翳りのある表情で腰の辺りを気にした。


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