砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
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半年ぶりに王の寵愛を受け、育児からも解放されて、リーンは眠り薬でも飲んだかのようにぐっすりと眠っている。
かすかな子供の泣き声にサクルのほうが目を覚まし、思わず、訪れてしまった。
思えば、リーンのいないときに、子供たちの部屋を訪れたのは初めてのこと。
正妃付の侍女をしていたマルヤムは、若い乳母たちの教育係と監視役として、乳母に復活していた。
「まあ、陛下がわざわざお越しくださるなんて……寝所まで聞こえてしまいましたでしょうか?」
「いや、文句を言いにきたわけではない。安心いたせ」
せっかくの正妃との一夜を邪魔したと思ったらしい。
サクルのほうが慌てて言い訳めいた言葉を口にしてしまう。
「黒髪が王子であったな」
何気なく覗き込んだ瞬間、アサド王子がピタッと泣きやんだ。そして何を思ったのか、目を開くと食い入るようにサクルの顔を見ている。
獅子(アサド)の名を持つ王子は父と同じ金色の瞳をしていた。
胸に不思議な感慨がよぎる。
それはこれまで経験したことのない、リーンと出会ったときとも違う、静かな感動だった。
半年ぶりに王の寵愛を受け、育児からも解放されて、リーンは眠り薬でも飲んだかのようにぐっすりと眠っている。
かすかな子供の泣き声にサクルのほうが目を覚まし、思わず、訪れてしまった。
思えば、リーンのいないときに、子供たちの部屋を訪れたのは初めてのこと。
正妃付の侍女をしていたマルヤムは、若い乳母たちの教育係と監視役として、乳母に復活していた。
「まあ、陛下がわざわざお越しくださるなんて……寝所まで聞こえてしまいましたでしょうか?」
「いや、文句を言いにきたわけではない。安心いたせ」
せっかくの正妃との一夜を邪魔したと思ったらしい。
サクルのほうが慌てて言い訳めいた言葉を口にしてしまう。
「黒髪が王子であったな」
何気なく覗き込んだ瞬間、アサド王子がピタッと泣きやんだ。そして何を思ったのか、目を開くと食い入るようにサクルの顔を見ている。
獅子(アサド)の名を持つ王子は父と同じ金色の瞳をしていた。
胸に不思議な感慨がよぎる。
それはこれまで経験したことのない、リーンと出会ったときとも違う、静かな感動だった。