砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
リーンはそもそもレイラーの侍女だった。
それがいきなり異母姉になったのだ。その上、バスィールの第一王女としてサクル王の正妃となったリーンを妬んでいた。リーンに負けまいと率先して子作りに励みそうなものだが……。
「これは異なことを。妻は夫に従うもの。レイラーは私の意に沿わぬことはいたしません」
当然のように言われては、サクルの返答など限られてくる。
「そのとおりだ。どうやら、サソリ(アクラブ)も懐けば可愛いものだとみえる」
「なんのことやら……。私の妻であるなら、彼女は子犬のようなものです。ひどく臆病で、しかも世間を知らぬ小娘でした。非常識にもうるさく泣き喚き、主のもとから逃げ出す愚かな真似もいたしましたが……。今はきちんと躾けておりますので、ご安心ください」
しれっと答えるカリム・アリーにさすがのサクルも反撃したくなる。
「ああ、たしかに。よく躾けられているようだ。あのレイラーが可愛い子犬に見えるくらいだからな」
「陛下!」
「人のことを色々馬鹿にしているようだが……おまえも“相当”だぞ」
サクルの本音に、ようやくカリム・アリーの表情も変わる。
「間違ってもその台詞を妻の前では言わないでいただきたい。これでも、夫の威厳を保つことに私も必死なのですから」
カリム・アリーは憮然として答えた。
それがいきなり異母姉になったのだ。その上、バスィールの第一王女としてサクル王の正妃となったリーンを妬んでいた。リーンに負けまいと率先して子作りに励みそうなものだが……。
「これは異なことを。妻は夫に従うもの。レイラーは私の意に沿わぬことはいたしません」
当然のように言われては、サクルの返答など限られてくる。
「そのとおりだ。どうやら、サソリ(アクラブ)も懐けば可愛いものだとみえる」
「なんのことやら……。私の妻であるなら、彼女は子犬のようなものです。ひどく臆病で、しかも世間を知らぬ小娘でした。非常識にもうるさく泣き喚き、主のもとから逃げ出す愚かな真似もいたしましたが……。今はきちんと躾けておりますので、ご安心ください」
しれっと答えるカリム・アリーにさすがのサクルも反撃したくなる。
「ああ、たしかに。よく躾けられているようだ。あのレイラーが可愛い子犬に見えるくらいだからな」
「陛下!」
「人のことを色々馬鹿にしているようだが……おまえも“相当”だぞ」
サクルの本音に、ようやくカリム・アリーの表情も変わる。
「間違ってもその台詞を妻の前では言わないでいただきたい。これでも、夫の威厳を保つことに私も必死なのですから」
カリム・アリーは憮然として答えた。