砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
後編
~*~*~*~*~
「また……なんと早計な」
事情を知ったカリム・アリーは呆れた声を上げる。
言われなくともサクル自身が重々承知していた。なんと早まった言葉を口走ってしまったものか、と。
「正妃様はなんと?」
「――承知した、と」
子供たちの泣き声の中、リーンの声も涙に震えていた気がする。
それを思い返すだけで、サクルは取り返しのつかないことをしてしまった気分だ。
「また陛下らしからぬことを。たしかに、ハーレムで女性を調達しては、後日、いろいろと正妃様のお耳にも入るでしょう。そんなときこそ、身分をごまかして娼館に出入りすれば済むことではありませんか?」
「いや、違う。そうではない」
カリム・アリーの言葉にサクルは歎息した。
考えなかったわけではない。
だが直前で、自分が女を欲しているのか、リーンを欲しているのか、心の底に潜む本心に気がついた。
それは、行為こそ同じであっても、本質は全く違う。
「私は女が抱きたいわけではない。……子は大事だ。たとえ、髪の色で区別がつく程度の顔であっても、ろくに目も開けず、話しかけてもひたすら泣くだけだったとしても、命がけで守るつもりでいる。だが、私にとってリーンは何より大事な妻なんだぞ! それを……」
「また……なんと早計な」
事情を知ったカリム・アリーは呆れた声を上げる。
言われなくともサクル自身が重々承知していた。なんと早まった言葉を口走ってしまったものか、と。
「正妃様はなんと?」
「――承知した、と」
子供たちの泣き声の中、リーンの声も涙に震えていた気がする。
それを思い返すだけで、サクルは取り返しのつかないことをしてしまった気分だ。
「また陛下らしからぬことを。たしかに、ハーレムで女性を調達しては、後日、いろいろと正妃様のお耳にも入るでしょう。そんなときこそ、身分をごまかして娼館に出入りすれば済むことではありませんか?」
「いや、違う。そうではない」
カリム・アリーの言葉にサクルは歎息した。
考えなかったわけではない。
だが直前で、自分が女を欲しているのか、リーンを欲しているのか、心の底に潜む本心に気がついた。
それは、行為こそ同じであっても、本質は全く違う。
「私は女が抱きたいわけではない。……子は大事だ。たとえ、髪の色で区別がつく程度の顔であっても、ろくに目も開けず、話しかけてもひたすら泣くだけだったとしても、命がけで守るつもりでいる。だが、私にとってリーンは何より大事な妻なんだぞ! それを……」