淡い色に染まるとき。
驚いて桃子ちゃんの腕を引っ張る。この子が病院で出会った子だよと教えようとメモ帳を取り出すと、雪ちゃんが私に気付いて立ち上がった。


「梓ちゃん!」


病院にいた時より、顔色がいい。元気になったんだね。

雪ちゃんが私の両手を掴んで涙目になりながらも笑った。


『雪ちゃん、退院したんだね!』


「うん。早く梓ちゃんに会いたかったから頑張ったの!」


『私もずっと会いたかった』


はしゃいでいると、花ちゃんと唯香ちゃんと桃子ちゃんがもしかして…と近づいてきた。

病院で会った子だよと紹介すると、雪ちゃんに自己紹介を始めた。


今日の雪は、雪ちゃんに会えるっていうことだったのかな。

突然降り出してくるんだもん。滅多に降らない地域なのに。


家に帰ったら彼に教えてあげよう。雪ちゃんに会えたことを。


「梓ちゃん、皆。これからよろしくね」


とっても素敵な笑顔で挨拶をした。

男子は何故か、照れている。女子のちょっと意地悪な子達が遠くから見ていた。


雪ちゃん、可愛いもんね。肌も白いし、笑顔が素敵、優しいし。


そんな雪ちゃんだから、皆のアイドルになってしまった。


休み時間、一緒に遊ぼうとしても他の子達に誘われてしまうし、授業で班を作る時も奪い合いになったり、会話することも出来ない。


久しぶりに会ったのに、会話が朝だけしか出来ないなんて。


「梓ぁ、そんなに落ち込まなくても。明日、また話せるよ」


「そうよ。話せないなら、手紙でも書けばいいんじゃないの?」


「でも、先生がダメって言ってなかったかなぁ」


会話もお手紙もダメ。

これじゃあ、いつになったらちゃんと話せるのだろう。



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