淡い色に染まるとき。
一緒に帰りたかったけど、今日は車だからと帰ってしまった。

ちょっとだけ落ち込みながら、花ちゃん達と帰った。


明日は話せるかなぁ。一緒に遊べるかなぁ。


冷たくなった手を息で温めながら、家まで走る。冷たい風が吹いてて、耳も痛くなるほど。

家に着いてすぐに私は洗面所へ向かう。


耳が真っ赤。指もカサカサになってしまっている。


「おかえりー…あ、それクリーム塗らなきゃな」


エプロンをつけた彼がやってきて、私の耳を触った。彼の手は温かくて気持ちいい。

耳を温めてもらってから、彼と部屋へ行くと、クリームを塗ってくれた。


指がちょっと切れていて、痛かったけど彼が痛いの、痛いの…と言ってくれて、ちょっとだけ痛くなくなった気がした。


「…梓、まだ指痛いか?何か辛そうだけど」


彼に抱きついて、雪ちゃんと会えたことを話した。会えたのはいいけど、なかなかお話も出来ない、遊ぶことも出来ない、いつになったら落ち着くのかなと伝えた。


「そうだなぁ、しばらくは落ち着かないだろうなぁ。でも、梓が喋りたいって思うなら、雪ちゃんだって喋りたいはずだ。久しぶりに会えたのに挨拶だけなんて、雪ちゃんも寂しいだろうし」


そうだよね、私だけじゃないんだ。


「そうだ、手紙ならどうだ?」


『手紙は禁止されているんだよ?』


「でも、梓はメモ帳で会話するんだから、バレても、こういう理由でって言えば納得してくれるよ」


そっか!私なら別にいいんだよね。

新しいメモ帳を取り出して、伝えたいことを書いた。これを明日の朝に渡そう。


明日こそ、ちょっとだけでも話せますように。


月にお願いをしてから、私は彼にありがとうと伝えた。


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